タイトル:深紅の戸籍簿 ~のとキリシマツツジの古木調査報告書~

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概要

深紅の戸籍簿。「のとキリシマツツジ」の古木の、分布と品種の調査報告書(平成29年改定版)です。

はじめにNPO法人のとキリシマツツジの郷前理事長宮本康一「花の力」プロジェクト実行委員会実行委員長政田成利能登には、三つの「朱」があると言われます。一つは祭り奉灯キリコの神秘な燈明であり、二つには夕日の陽光、三つには深い歴史を秘めた「のとキリシマツツジ」の深紅の花であります。私たち奧能登4市町(輪島市・珠洲市・穴水町・能登町)の愛好家は、この花の魅力をより多くの人に伝えたいと考え、能登空港が開港した翌年より「のとキリシマツツジフェスティバル」やオープンガーデンを公開して参りました。さらに県外の皆様に知っていただけるよう、平成22年および26年には東京都の環境省新宿御苑を皮切りに、神奈川県立フラワーセンター大船植物園、京都府立植物園、新潟県立植物園、東京都立六義園、東京都立神代植物公園、大阪市立長居植物園で展示会とシンポジウムを開催して参りました。そして、平成26年には能登空港での「第1回全国キリシマツツジサミット」を開催することができました。さらにこれまでの保護、広報、調査活動が評価され、宝達志水町以北の4市5町の「のとキリシマツツジ」が平成28年末に「いしかわ歴史遺産」に認定されたことは存外の喜びであります。さて、「のとキリシマツツジ」は、名前に唯一「のと」を冠する花木です。5月上旬におびただしい数の深紅の小花を咲かせ、加賀藩主が観賞したという記録があります。能登では「幸せを運ぶ花」として、嫁ぐ娘に一株持たせたという話も伝わっています。そして、能登半島には、樹齢百年以上と推定される古木が500本以上存在するものの、来歴などは謎に包まれていました。平成17年から始まった倉重祐二・新潟県立植物園副園長、小林伸雄・島根大学教授による学術調査によって、のとキリシマツツジは、「江戸キリシマ品種群」の一つであることが解明され、その調査報告に基づき古木3本が石川県の天然記念物に指定されました。また、能登固有と考えられる、のとキリシマツツジの存在も確認されております。さらに調査が進むにつれ、新たな古木も次々と発見されました。そのため、今までに確認された「のとキリシマツツジ」の古木を登録する事業として、「深紅の戸籍簿」と名付けた台帳の作成を決定し、多くの関係者の協力を得て、5年費やして平成27年に一応の完成を見ました。現在は「花の力」プロジェクト実行委員会が中心となって調査が進められていますが、未だ新しい古木の情報が寄せられています。これらを加えてここに最新の情報に基づく増補版を上梓しましたが、まだまだ知られていない古木も存在すると考えらます。皆様には引き続き情報の提供を願うものであります。能登全域で「深紅の戸籍簿」が、今後の保護、育成、研究の基礎資料として利用され、のとキリシマツツジを核とした新たなまちづくりや誘客促進につながることを期待しております。#(‐2)rP