干場三蔵さん(輪島市光浦町)

干場三蔵【PROFILE】ほしば・さんぞう

昭和8年生まれ。輪島市光浦町14-14。

「木のためならエンヤコラサ」

干場さん宅のキリシマツツジは樹齢350年以上といわれる本霧島の主木を始め5本以上の大きな株が庭に一堂に会し庭全体が真っ赤に染まる見事なものです。

「私が小さい時からこの庭はすでに出来上がっておって『咲くときれいなげな』と子供心に思っとった。ツツジが咲く頃になると輪島から父の友人が家族でやってきて『ツツジの花見』と称して毎年宴会したりしておりました。」

hoshiba3ー家族に伝承は残っていますか?

「いつ頃からかとかどうして植えたとか、先祖からは何も聞いていない。仕事が忙しかったしあまり手入れられんかって放ってた。雪が降れば押さえられ、でかい木でもオキが割れとる。それでも土が合うからか、病気もせんと太っとる。いじり(手入れし)だしたのは20年くらい前から。のとキリシマツツジがいろいろ言われ出してから。」

ーどんな方たちがいらっしゃいますか?

hoshiba1「近くからは興味あるモンしか来ん。むしろわざわざ遠くから人が見に来るようになった。どんだけでも来てほしい。ヨソの人が住所を頼りに光浦まで来て『ここらへんにツツジがあるが、どこけ?』と聞いても前はだれも分からんかった。新聞に毎年出るようになって知られるようになったが、一度新聞に出さなかった年があって『はや散ってしもうとる』と怒られた。最近のことで、50代の金沢から来た女性がやって来たなりビックリして『わあ、こんな所にこんなきれいなツツジが咲いてる!』と大声を上げた。すぐ私に気づいて「ごめんなさい」と恥ずかしそうにおっしゃるんで「いいですよ」と言った。テレビ局のクルーも迷った藪のような所なのはわしらもよう分かっとるから。」

「女性と一緒できれいや言ったら喜ぶ。どんどん褒めてやってください。あ、花のことやよ、私じゃねえげぞ(笑)。」

ーキリシマツツジのお手入れは?

hoshiba2「来られた方はみなさん『こんだけ世話するのは大変でしょうね』と必ず言われる。本当はなんもしとらんけど(笑)。3月になったら雪吊りを外し、5月の花が終わったら油かすのお礼肥をして枝についたウメノキゴケをヘラでこすって取って枝切りをする。11月には人に頼んで雪吊りしてもらう。雪が降ると枝に積もった雪を落とすが、これには難儀する。でも負担やと思っとらん。こんなん当たり前。どんだけかかっても守っていかな。息子も見とる。放ってはおかんだろね。今輪島におるが子供らが結婚したら(ここへ)上がってくると言っとる。」

ー干場さんのお仕事は?

hoshiba4「昔は農業。野菜を作って輪島の朝市に売っとった。地元消費だけだった頃のこと。輪島ではヒカリ(光浦)の野菜は味がいいと一目置かれていた。なんでも早く採れて高く売れた。1969年からは家の基礎工事を請け負ってきた。今の家は昭和30年代に建てたもので材木は自分の山から切り出した。材料は人の通る細い道しかなかったから全部担いで上げた。」

干場さんのお宅は光浦といっても少し内陸へ入ったところで、崖のような急峻な道を2回折り返した行き止まりにあります。快活で気さくな干場さんが迎えて下さいます。開花期にはオープンガーデンとして開放されます。